黒い悪魔

 1月28日に越冬中の甲虫を探そうとよく行く河川敷をちび宇治虫と散策していました。(日記は1/29の更新になってます。)
寒いながらもそれなりに小さな甲虫達が採れて満足しての帰り道。ふと目に入った異形のモノ。それは川べりに生えている一本のクワの枝に付いていました。
 「なんだこれ?」と恐る恐る近づいてみれば、長さ8センチくらいの少し楕円な泥の塊。蛾かハチの巣だな・・・と思いながらついバキッと枝から剥がしてみると、なんとも綺麗なレモン色の幼虫が入っていました。
 「おお!! すげ〜!!」と顔を見合わせてみたもののこの寒空に放置していくわけにもいかず、持ち帰ったのでした。

 去年の今頃、コンボウアメバチを羽化させた事があります。なかなか美しいフォルムをしていて気にいった覚えがあります。せっかくだから今年はこいつを・・・、と思い観察を続けてきました。

e0083097_185677.jpg これがその土塊です。泥というよりはなにやらセメントのような質感と重量です。固く締まっていてなかなかくずれません。
e0083097_1874085.jpg クワの枝から引き剥がした勢いで、繭の一部が裂けててしまったようです。そこから覗けばこのような綺麗な幼虫が静かにねむっていました。
 枝との接着面からみれば繭は計5個あります。中の様子が見えるのが2個です。

 ところが、もう一つの繭の中の幼虫は少し色がくすんでいます。なんだかハリもないし。どうやら死んでいるようだ・・・。そうは思いながらもそっとしておきました。本当に死んでいるなら、朽ちていくだろうと思って・・・。

 ちょうど土塊がすっぽり入る大きさのタッパーに容れて保管してきたのです。

そして2月、3月、4月と過ぎていきました。その間、思い出したように時々は覗いてみたりしてもなにも変わらず、幼虫たちはそこに眠っていました。

 あの「死んだ」と思われた幼虫も腐るわけでもなく、そのままの状態で繭の中に横たわっていたのです・・・。

 ・・・・・・

 ・・・・・
 
 ・・・

e0083097_189586.jpg (4月10日)

 暖かくなり桜も終わろうかという頃、久しぶりに例の「土塊」を覗いてみました。

 !?・・・・・・???

 幼虫からまた幼虫がでてる・・・。


少しの間、なにがなんだかわからなくなりました。やがて冷静に考えてハッとしたのです。あの「死んだ」と思われていた幼虫は「なにか」に寄生されていたのだと気づいたのです。一体なにが・・・?。


e0083097_1810528.jpg 5月3日)

 寄主をほとんど食べ尽くしたパラサイトはどんどん肥大していきます。汁一滴残さないくらいの食べっぷりです。

 ほとんど食べつくしたようです。なんだか変な液体にまみれていてなんだかよくわかりません。

e0083097_18115741.jpg かたや健全な幼虫はというと何も知らないかのように相変わらず静かに寝ています。


 正体不明の虫がなんなのか・・・。
このころにあれこれと考えてみた。土塊はおそらくドロバチもしくはその仲間で間違いないようだ。いくつか検索してみると気になる記述をみつけた。
泥で巣を作るハチでスズバチがいる。その可能性もあると・・・。そうなってくるとにわかに心がざわついてくる。スズバチに寄生となると・・・、オオセイボウかっ!?
これは俄然楽しみになってきた。

e0083097_18154391.jpg (5月6日)

 いつのまにか蛹になっていました。ほんの数時間前まではまだ幼虫だったのに。この前蛹から蛹になる瞬間っていつも見逃してしまう。

e0083097_1816508.jpg (5月11日)

 この頃は、ずいぶん蛹も安定しているようだ。容器の蓋を開けて明かりの近くに持っていくと、必ず2回、クネクネと体を捩ってみせてくれる。

 それでも、「ずいぶん頭の小さなハチだなあ〜?」と呑気に考えていた。本気で「ハチに寄生した別のハチだと思いこんでいました。
カミキリの材箱からさんざん寄生ハチが出てきていたので「寄生=ハチ」の図式が頭に出来上がっていました。

e0083097_18173475.jpg (5月17日)

 そろそろ色づいてきました。頭が赤くなっています。
[#IMAGE|e0083097_1818517.jpg (5月18日)

 羽化間近のようです。アカハネムシの蛹も黒くなってからはあっという間だった。そろそろだな。
 ・・・・・・・・でも、黒いなあ。緑っぽくならないのかなあ。オオセボウじゃないのかなあ。(←まだ言ってる)



e0083097_18201685.jpg そしてこれまたほんの2時間ほど目をはなした隙に羽化を始めたようです。
「もうすぐ羽化しそうだよ。」とちび宇治虫を呼んでみた。

「おお〜!!ホントだ。・・・・・・・・・・・・・・・・、
でもな、・・・・・・う〜ん、僕は甲虫だと思う。

「えっ・・・!? 甲虫?? ああ〜〜・・・・・・、なるほど・・・。
そうか・・・・、うん、言われてみれば・・・・。」
ちょっとおかしいなと感じながらもまだハチだと思っていた。頭の固い父親だ。よくよく見れば、透明な鞘羽があるじゃないか。

「一体何の甲虫だ?」

「う〜ん・・・・、ハナノミ? ハナノミっぽく見える・・・。」

たしかに頭がグラグラしていそうなところはオオハナノミっぽい。
 

e0083097_18225112.jpg (5月19日)

 ほぼ一日経って、ずいぶん色がおちついてきました。
でもまだお腹がボッテリ。
e0083097_1827485.jpg (5月20日)

 体はほとんど真っ黒に染まりました。しかしお腹はボッテリのまま。

 すぐにスリムになると考えていたのに、意外にもなかなか縮まらず、完全な成虫になるのはいつなんだ?とヤキモキさせられました。


e0083097_18235675.jpg (5月22日)

 いつ見ても繭の中でジッとしている。なかなかスリムにならないお腹に業を煮やして、「ちょっと写真を撮らせてくれよ」と追い立ててみる。すると慌てて飛び出し、土塊上をグルグルと回りはじめた。その時に口からなにやら白い液体を吐き出しながら逃げまわっている。
 なんだろう?以前、アゲハチョウの羽化を観察した時に飛び立ったあとの蛹の抜け殻におしっこのようなものが溜まっていた。体を軽くするための排泄だとか。
それを口から出しているのか?こころなしか、お腹が縮んできたような気がする。


e0083097_18243625.jpg (5月23日)

 そして、今日やっと真っ黒な完全体(?)になりました。
お疲れ〜。


 ムモンオオハナノミ Macrosiagon nasutum

 オオハナノミ科に属する虫たちは大量の卵を産み、花上などで寄主となるハチなどに取り憑き、過変態をしながら成虫になるという。ハナノミという名前を持ちながら、生態的にはツチハンミョウに近いところがあるらしい。
 生態についてはちょうど同時期にaclerisさんがいもむしうんちは雨の音のなかで紹介されています。(私より詳しいですよ。)

 その生態の一部を経過観察できたのは幸運でした。いつもカミキリ幼虫が寄生蜂にやられていた訳だけれども、今回はハチに甲虫が寄生していたのだから立場が逆転ですね。(ちょっと違うか?)
 ハチの巣からオオハナノミが出たり、ヤママユガの繭からコンボウアメバチがでたり・・・。虫の世界って不思議。そこがまた楽しいです。


e0083097_342378.jpg
 鉄仮面のような、能面のような・・・、不気味な表情を持つこの黒い顔が怪しさを引き立てています。後頭部の雰囲気とかはエイリアンのようだ!と書きたかったけれど、aclerisさんに先を越されてしまってちょっと悔しい思いをしています。(笑)
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by aile21 | 2007-05-24 03:51 | とうちゃん


京都南部の野山で宇治虫親子が発見した生き物の記録  出演 とうちゃん(aile21)・かあちゃん・ちび宇治虫(showzine)


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